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スキンヘッドにすることで、ハゲの土俵から降りた

「雑貨屋を経営しているんですが、今年の1月に店舗が全焼したんです。

2軒先から延焼して、開店31年目だったお店も、ジュエリーを製作している工房も、住居も、みんな燃えてしまいました。今は、受注のジュエリーを作って生計を立てています」

突然、壮絶なお話から始まった今回のインタビュー。

小倉さんがスキンヘッドにしたのは、ちょうど保険会社から脱サラをして、今年全焼してしまった雑貨店『ハッピーカンパニー』を開業した頃だったそうだ。

薄毛からスキンヘッドになったことも、お店が全焼してしまったことも、今回のインタビューテーマは『喪失』だ。

失うことを乗り越えて、小倉さんは何を掴んだのだろうか。

木を隠すなら森に、ハゲを隠すならハゲに

10代の頃はパーマをかけていました。お洒落パーマですね。

20代後半から髪が薄くなってきて、パーマがハゲ隠しになりました。

育毛剤を試したんですが、効果がなかった上に高かったのでやめてしまいましたね。
隠しているつもりはなかったんですが、結果的にパーマでハゲが隠れました。

30代に入ると横分けに。それから勤めていた保険会社を辞めて、お店を始めてから縛れるぐらいに伸ばしましたが、それもわずかな間です。

その後は坊主にしてからスキンヘッドにしました。スキンヘッド歴は24年。

もうベテランなので、剃る道具は選ばないですね。今日はホテルのアメニティのカミソリで剃ってきました。

ちょっと残すぐらいなら剃ってしまった方がいいんじゃないかと思ったんです。最初はバリカンのアタッチメントなして、5厘ぐらいの短さにしました。

本音を言うと、恥ずかしいというか、不本意ではあったんですが『木を隠すなら森』ならぬ『ハゲを隠すならハゲ』ということで、髪を剃ってしまえば、ハゲているかどうかわからないですよね。

僕はスキンヘッドにしたことで、ハゲの土俵から降りたんです33歳の時でしたね。

剃ってからはハゲと言われたことはないし、言われたとしても自分で剃っているわけだし、そりゃハゲですよね(笑)

剃ったばかりの頃はまだ毛根があったので、全体的にうっすらと青くなっていました。

それ以降、今までずっとスキンヘッドです。

何かを捨てることで、新しい景色が見られる

僕のお店は夜7時に開いて、翌朝の3時まで開いている深夜営業のお店で、あえてお客さんが入りづらいような雰囲気にしたいと思っていたんです。

そこで勇気を出して入ってみると、楽しい空間が広がっている。そんな店内でした。

その入り口にいるのがスキンヘッドの店主の僕。お店の演出に僕の頭が一役かっているんです。

深夜営業なこともあって、やんちゃそうなお客さんが来てくれるんですけど、僕の風貌を見て一目置いてくれていますね。

とても素直に接してくれるんですよ。それは僕自身がこういう髪型をしていて、誰でも受け入れようという姿勢でいるからなのかもしれない。

他人から見ても、僕のそういう心持ちが伝わるのかもしれないですね。

だからスキンヘッドは案外、人から受け入れてもらいやすい髪型なんじゃないかと最近感じています。

昔、保険会社に勤めていた時を振り返って、もし当時、この頭だったらと考えると、もしかしたらお客さんから信用されるまでに時間がかかったんじゃないかと思ったんです。

でもそれを60代の髪の毛がふさふさの経営者の方にお話ししたら「そんなことはない」と言われました。

今の60代の方がそう言うんだから、それよりも若い方たちは、髪型に対して偏見はないのかもしれないですね。

もちろん幸せのカタチは人それぞれなので、ハゲを隠したり、共存したりするような髪型でも、本人が納得していればそれでいいと思っています。

でも仲良くなったお客さんが、若くして薄毛で、なおかつそれを隠しているような人だったら言っちゃいますね。

「みっともないぞ」って。

確かに若くしてハゲることは、辛いと思うんですよ。でもそこで、振り切って髪を剃ることは『何かを捨てる』ということだと思うんです。

何かを捨てることで得られるものもある。同じ景色を、別の角度や思いもしなかった角度から見られるようになると思うんです。

例えば、今まで悩んでいたようなことでも、裏から見たらとてもシンプルな答えがあったり、表だと思っていた道が、実は裏だったりという発見があるんじゃないでしょうか。

僕は火事で店舗と工房と住居を失いました。捨てるというか、期せずして失ってしまったわけですが、不思議と喪失感はないんですよ。

燃え盛るお店を見つめながら、めったに経験できない不幸を、今後の仕事にどう生かしていこうか考えました。

物理的に消失したものは、どうにかすればまた手に入れることができます。むしろジュエリー製作に使っていた道具は新調することで作業能率が上がるかもしれませんね。

タイムマシンに強制的に乗せられて、10年後にタイムスリップしたらこんな感じなのかなと思っています(笑)

店内は30年掛けてカラフルな雰囲気を作ってきましたが、新しいお店はシンプルにして、接客などのソフトの面でお客さんの心を掴むようなお店にしたいですね。

幸せのあり方は人それぞれだ。しかし、何かを諦めたり手放したりすることで、それまで予想だにしなかった新しい幸せが見つかるのかもしれない。

 

小倉盛人さんのメキシカンジュエリー店『ハッピーカンパニー』

旅先のメキシコで衝撃を受けた現地のシルバージュエリーの意匠に衝撃を受たのだそう。メキシコからインスパイアされたジュエリーの販売や受注製作を行っている。

モデル:小倉盛人 『ハッピーカンパニー』店主/ 撮影:長谷川さや / インタビュー:高山 / 編集構成:東ゆか

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