
ハゲてからが人生一番面白い
今回、お話を伺うのは、個人へ向けたファッションスタイリングを手掛ける事業『株式会社アマータスタイル』の代表取締役社長、尾形靖雄(おがたやすお)さんだ。スキンヘッドの頭と眼鏡がトレードマークだ。
スタイリストとして『色気×カジュアル×フォーマル』な大人の着こなしをベースに、年間約250人のべ3000人以上のスタイリングを手掛けてきた。
そんな尾形さんがスタイリストになったのは37歳のとき。それまでアパレルの経験はなかったという。
スタイリストになった経緯や、ハゲを強みに変えた人生、モテと髪型の関係についてお話ししていただいた。
誰かの人生に関わるスタイリスト

ずっと興味はありながらも、経験もなく向き合ってこなかったファッション。
きっかけは、「尾形くんはファッションがやりたいはずだ。やりたいことから逃げてない?」という一言だった。
「36歳のときにメンタルコーチになりたくて、コーチングの合宿に行ったんです。
そうしたら、受講生の一人から『結局、尾形くんはファッションがやりたいんじゃない?やりたいことから逃げてない?』と言われたんです。
確かにそうだなと思って」
整体師の仕事をしていたときも、『お洒落な整体師』を目指していた。
「お金を稼いで、自分の好きな洋服を買うことに目がいっていましたが、本当にやりたいことはそれじゃなかったんだなと。
逃げないでやっちゃおうと思いました」

販売員やデザイナー、バイヤーなど、アパレル業界にも様々な職種がある中、尾形さんが選んだのはスタイリストだった。
「アパレルをやろうと決めたときに、最初からスタイリストを目指していたわけではないです。
スタイリストは誰かの人生に関われると思って。
人が変化したり成長する部分に携わりたいなと思いました。
今は経営者の方を中心に著名人のスタイリング、婚活学校でファッションの指導をしています」
とはいえ、スタイリストとしてのスタートが最初から順調だったわけではない。
「まずはお客さんがいなかったので、スタイリストとして週5日アルバイトをしていました。
経営塾にも通ってマーケティングも学びましたね。前職の退職金も貯金も、学びに投資しました。
スタイリストとしての技術よりも、まずは集客を学ぼうと思ったんです。実力に足りないものが何かはお客さんの声から学んだ方がいいと思いました」
今が苦しくても、うまくいったときにネタになる

「独立してわりと早い段階でお客さんが来てくれましたが、リピーターにはなってくれませんでした。
料金は1回2〜3万円でしたが、単発のお客さんを繋いでいくだけでは苦しかったので、年間契約を作ってみました。
でも、契約料をいくらにすればいいかもわからなくて。
お客さんが来ないのは料金のせいなのかなと思い、値下げしてみたりと迷走していました」
会社としての収益がなく、アルバイトをしながらも続けてきたスタイリスト。今年で10年目になり、経営を安定させることができた。
「6年ぐらい前に会社として収益が生まれるようになりました。
前半の4年ぐらいは、順調な時期もあったんですけど、そんなときに従業員にお金を持ち逃げされてしまいました。
うまくいっているときにそういう落とし穴がありました。
軌道に乗れたきっかけは、それまでに培ってきたお客さんたちですね。
僕は、お客さんと仲良くなれるタイプだったので、お客さんのお知り合いの方に営業しました。新規を目指さないで、維持をしたんです。
『コバンザメ戦略』じゃないですけど、一人のお客さんから広げていく方法を取りました」
現在、42歳。社会人になって約20年。不動産営業や整体師、トラックの運転手など職を転々としていたが、スタイリストは10年続いている。
「うまくいかなくても折れなかったですね。
継続して利用してくださっていたお客さんたちが、皆さんすごい方なんです。
中には一時期うまくいかなくて、ホームレスになってしまった人もいましたが、ちゃんと再起を図って返り咲くことができている。
僕もお金に困った時期がありましたが、「今は大変だけど、この先はきっと楽しいはずだ」と信じて頑張ってきました。
成功したときに、うまくいっていない今がきっとネタになるじゃないですか。そうなるといいなって。
40歳で独立したときは結婚もしてなかったので、何も守るものがないから攻めちゃおうかなって感じでしたね」
薄毛が始まったときはなんとか改善しようと抗った

髪が薄くなり始めたのは、独立する10年前、30歳のときだった。初めから薄毛を受け入れられたわけではなかった。
「右サイドから薄くなり始めました。それまでけっこうモテてきたんです。
だから30歳になってハゲたとき、『俺の人生はもう終わった』と思いましたね。
最初に発毛に挑戦して数100万円する1年半のコースに申し込みましたが、全然生えてこなかったので、AGA治療のクリニックを紹介されました。
初めからそうした方がよかったんじゃないかと思って、イヤになってAGA治療もやめてしまったんです。
その後、増毛にまた数100万かけましたが、それでも薄毛の進行は止まりませんでした」
それがちょうどスタイリストとして独立する頃だった。
「薄毛が目立たないように金髪にしたんです。
頭皮と同じ色味にすれば目立たないと思ったんですが、薄毛は進行しているし、もうお金もない。
ハゲ散らかしているスタイリストは説得力に欠けるんじゃないかと思いました。そこで思い切ってスキンヘッドにしてみたんです。
周りからも似合うと言われたので、自分の選択は間違っていなかったと思っています」
薄毛の人が気を付けるべきポイントは清潔感

自身の職業と髪型のあり方に悩んだ尾形さん。そんなスタイリストが考えるハゲが気を付けるポイントは清潔感だ。
「ハゲって言葉がどうしても清潔感を欠いているように聞こえてしまうんですよね。
だから清潔感があることが一番大事だと思います。
だからといってあまり着飾りすぎるのはちょっと違いますよね。
服に着られてしまう可能性もあります。ある程度自分で着こなしができるスタイルが確立できることが理想ですよね」
婚活学校でファッション指導を行なっている中で見えてきたのは服装と薄毛の関係性だ。
「やっぱり『自信』って大切です。薄毛の人って、コンプレックスが強い。
世界の誰一人として薄毛になりたい人なんていないんです。
でもそうなってしまったときに、弱みを強みに変えて、オープンにできるかどうかが重要ですね。
コンプレックスを開示することで、相手に気を遣わせないようにするとか、笑いにするとか、それぐらいポジティブで、おおらかな感じがあれば素敵だなと思います」
髪型にも服装にも自信を持つことで人は行動に移せる。婚活学校ではそのような指導をしている。
「最初はファッションや髪型変えたところで一体何が変わるの?と思っている人もいます。
でも見た目がいい方に変わることで、自信とともに行動力が生まれます。
だからまずはファッションを変えてみることを指導するんですよ。
内面を磨くだけじゃ前には進めないんです」
ハゲとメガネを自分のアイコンにする

「スキンヘッドにしてからの方が順調です」
と語る尾形さんはスキンヘッドにしてから結婚している。出会ったときもすでにスキンヘッドだった。
「男性はほとんどの人がいずれ多少なりとも髪が薄くなりますよね。
だったらだんだん薄くなって自信を失う姿を見せられるよりも、最初から髪の毛がない人の方がいいと妻から言われました。
仕事に関しては、スキンヘッドにしてから頭の上にいつもメガネを置くようになって、それがトレードマークになったんです。
それのおかげで相手に覚えてもらえるので、仕事もうまくいくようになりました。
僕、NOHAIRSさんのロゴみたいに、名刺もハゲにメガネなんです!」
ハゲというコンプレックスを断捨離し、もし生やせるとしても生やしたくないほど今の髪型を気に入っているという。
最後に、薄毛に悩むNOHAIRSの読者に伝えたいことを伺った。
「スキンヘッドにしてからいいことしかありません。
ハゲている自分を受け入れて、違うパフォーマンスを出せた方がいい。
薄毛を髪の毛で隠しても、きっとバレています。だったら、認めてそんな自分に自信を付けた方がいい。
そうしたらきっと行動力も生まれるはずです。それに手入れがめっちゃラクですよ!」
自信が生まれると、行動が変化する。そして次第に、状況も変わる。
髪型に対するコンプレックスを捨てて、自分だけの強みにするのはどうだろうか?
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モデル:尾形靖雄 株式会社アマータスタイル 代表 / 撮影:長谷川さや / インタビュー:高山 / 構成:森美沙稀 / 編集:東ゆか
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