
心も身体も柔らかく——フォロワー11万人のパーソナルトレーナー
『目標を持て』、『なりたい自分をイメージしろ』そう自分に課すことで、何かに固執してしまうことはないだろうか。
「心も身体も硬くなっているときは、一つのことしか見えていないときなんです」
優しそうな顔立ちが印象的な柴雅仁さんは、楽に動ける身体づくりを指導しているパーソナルトレーナーだ。
NOHAIRになったことも、パーソナルトレーナーになったことも、一つのことに固執することなく柔軟に人生の舵を切った結果だという。
——パーソナルトレーナーってどんなお仕事ですか?
楽に動ける身体のつくり方を教えています。
例えば、一眼レフカメラを使って写真を撮るときも、身体の使い方一つで写真を撮る動作が楽にもなるし、苦しくもなるんです。
スポーツでいうと、走ったり、ボールを蹴ったりする動作も、身体の使い方でパフォーマンスがアップするんです。
日常生活の中で腰や膝などに痛みを感じている人も、身体の使い方を変えるとその痛みが軽減されるんです。
そういったことを教える仕事をしています。
ビジュアル系マッチョから、「君ハゲそうだね」と言われて坊主頭へ

小学生のときはスポーツ刈りのような短めのヘアスタイルにしていました。
高校時代に付き合っていた彼女がビジュアル系バンドのCDを持っていたんです。当時流行っていたのはGLAYでしたが、彼女が好きだったのはDIR EN GREY。だいぶハードなビジュアル系バンドですね。
それを聴かせてもらって衝撃を受けたんです。「これはヤバい」と。
ビジュアル系のスタイルは髪が長くて、ピアスをじゃらじゃら付けている。そういうところに惹かれました。
ビジュアル系バンドを好きになったことで、僕も髪を伸ばすようになりました。当時、サッカーをしていたんですが、襟足を伸ばして、前髪を少し長めにして、今と比べるとかなりロングヘアでした。
一方で自分の父や祖父を見ていて、自分も将来的にハゲるんだろうなという心配をし始めたのもこの頃です。
髪も染めて傷めているし、これはヤバいなと思っていて、そのときは良かれと思ってトニックを使っていました。
高校卒業後は、スポーツ系の専門学校に入ってトレーナーになるための勉強をしました。当時、華奢な体を大きくしたくて筋トレにハマっていたので、ロングヘアーのマッチョになりました。
髪型の転機があったのは22歳ぐらいのとき。友達のバイト先の飲食店にご飯を食べに行ったら、そこの店長から「君、将来ハゲそうだね」と言われたんです。
「初対面で!?気にしているのに!」と面食らいました。
もともと広いおでこを気にしていて、隠していたんですが、初対面でそれを言われるとは・・・と思って色々考えました。自分でもハゲるだろうという気はしていたので、どうしようかと考えました。
育毛シャンプーは種類がたくさんあって、どれがいいのか分からないし、育毛サロンも高そうだし・・・。もうどうしようもない。それならハゲる前から坊主にすればいいと思って、それから坊主にしました。
今でもまだハゲてはいないんです。でも生えてくる毛は弱々しいので、将来的にはハゲるんだろうと予想しています。
最近は5厘に剃っていて、いつでもハゲていいように心づもりしている。そんな感じですね。
筋トレの腰痛からパーソナルトレーナーの道へ

坊主にした同時期の22歳のときに鍼灸の専門学校に入りました。
筋トレをしているときに肩や腰を痛めたんです。高校のサッカー部時代でも怪我をしたことはなかったのに、これはどうしたことだろうと思って、身体について学びたいと思ったんです。
専門学校で出会った人に身体に詳しい人がいました。彼はパーソナルトレーナーとして働いている人で、身体を調整することに詳しかったんです。
彼が教えてくれた、筋肉や骨格を緩めたり、矯正したりする筋肉調整や骨格調整というのが興味深くて、筋トレで身体を鍛えることから、調整することにやりたいことがシフトしていったんです。
ニッチさが売り。でも、お客さんは定着しずらかった
パーソナルトレーナーというと、美容のための身体づくりやダイエット、筋トレを皆さんは思い浮かべるかもしれません。
僕が行うトレーニングは、パーソナルトレーナーとしてはニッチなジャンルを扱っているんです。
筋肉を大きくする指導ができるトレーナーはたくさんいますが、それをスポーツのパフォーマンスに繋げられるような指導ができるトレーナーは数少ないんです。
また、身体の故障に関しても、鍼やマッサージで治療ができる人はたくさんいても、その後の運動の指導まではできる人は多くありません。
僕はその点、治療からリハビリ、パフォーマンスアップまで、指導できることが幅広いんです。
それでもお客さんにずっと通い続けてもらうのはなかなか難しいことでした。
23歳のときに始めたパーソナルトレーナですが、お客さんが付いては離れて、うまくいかず、一旦は辞めてしまいました。
その後、鍼灸師の資格を生かして鍼灸の整骨院で働きましたが、やっぱりパーソナルトレーナーが一番やりたいことだったので、再開することにしました。
『今』を見極めて、Twitterフォロワー11万人のパーソナルトレーナーに

それから10年近く、こつこつとパーソナルトレーナーを続けてきました。
しかし世の中の動きを見ていると、今後オンラインでの集客力が必須になるだろう感じたんです。
既に結婚もして、子どももいましたが、自分のパーソナルトレーナーとしての目標値に対して、毎月ぎりぎり届いたり届かなかったりというラインを行き来していました。
何か新しい取り組みをしないと、家族を守っていけないと思ったんです。
何か本気で新しいことを、と思って2018年2月に始めたのがブログです。まずはブログで毎日セルフケアについて発信しました。
Facebook、Instagram、Twitterも始めましたが、当時反応があったのはFacebookやInstagramで、Twitterは一番手応えがありませんでした。
そんな感じだったので、Twitterに関してはあまり力を入れていなかったんですが、2018年の終わりぐらいに、あるスポーツ選手のトレーニングにコメントを付けてツイートをしたところ、それが少し拡散されたんです。
InstagramやFacebookでも同じことをしたのに、一番反響があったのがTwitterでした。
「何だこれ?」と自分なりに拡散された理由を考えて試行錯誤していたら、動画付きのツイートへの反応がいいということに気が付きました。それから
タイムラインで流れてきたときにすぐに反応できそうな、10秒ぐらいのストレッチ動画をつけるようになりました。
「腰が痛いときはお尻を緩めましょう」とか、「肩こりには脇をさすりましょう」みたいな意外性のある動画にしましたね。
それがハマって、バズが起きてTwitterのフォロワーが1000人ぐらいから11万人になりました。『通知が止まらねえ』状態ですね。
そこからTwitterがメインになって、バズがきっかけで出版の依頼が来て6冊出版しました。
フォロワーさんや、生徒さんから「母に買いました」、「父に買いました」というご報告をいただきました。
普段ネットの情報が届きづらいおじいちゃん、おばあちゃんにも手にとっていただけたことが嬉しいです。
身体のことが分かるとメンタルの整え方も分かってくる

昔はメンタルの浮き沈みが激しかったんです。一度パーソナルトレーナーを辞めたのもそういうこともあって・・・。でも、身体のことが分かるとメンタルの整え方もわかってくるんですよ。
もちろん日常生活が安定して、なるべくストレスのない状態であることが望ましいので、環境づくりは自分でしています。
例えば、僕は上下関係は苦手だし、必要と思えないことは極力やりたくない。そういう点で、一人で働いている今は職場のストレスというのはほとんどありません。
プライベートなことでいうと、昔は彼女に振られることが耐えられませんでした(笑)。どん底まで落ち込んでたんですよ。それが今は結婚して子どももいるから落ち着いているわけです。
耐えられるストレスと、そうでないストレスを見極められるようになったことが大きいですね。
身体のことでいうと、ストレスで思考が固まってしまっているときは身体にも力が入っているんですよ。
身体が緊張している状態だと、大事な判断ができないんです。身体の力が抜けていると、思考も柔軟になります。
無理なものは無理だと諦らめられるし、方向転換ができます。
髪に勝負を委ねるな、他で勝負しろ

薄毛の人は薄毛に悩みすぎて、精神を病んでしまう人がいると思うんです。
そうなってしまう前に『なぜ薄毛が嫌なのか』を深堀りしてもらいたいと思います。
どうして嫌なのか。恥ずかしいからか。だとすると何が恥ずかしいのか。
おそらく大多数の人は、モテないことが怖いんだと思います。
「ハゲはどうしても嫌」という女性はいると思います。そうなったら恋愛対象外だから仕方ありません。
それなら隠しているハゲとさらけ出しているハゲ、どちらが好感度が高いかというと、さらけ出している方だと思うんですね。
あとは髪型にこだわらずに、他で勝負をすることをすすめたいです。僕は他で勝負しました。
髪の毛もあって、背も高くて、顔もいい人と勝負したところで勝ち目はありません。
だからもっと自分が勝負できるような、例えばトレーナーをやっているから、姿勢だったり、接客をしているからお喋りや、相手をどう楽しませるかということを考えました。
ステータスが低いところに固執するよりも、自分の良いところを磨いたり、伸びしろ部分を磨いていってほしいですね。
心も身体も柔軟であることが大切
「目標は?」ということを聞かれることがあるんですが、長期的な目標は立てないようにしています。
コロナ禍で始めたオンラインレッスンの集客をもう少し増やしたいとか、コロナが落ち着いたら対面トレーニングをどのように展開していくかという、少し近い将来のことは考えます。
10年、20年先のことはあまり考えずに、少しずつ軌道修正をしながらやっていきたいと思います。固執はしないで、選択肢を用意しておくイメージです。
心も身体も、柔軟さが大切ですよね。
セルフケア方法を発信している柴さんの
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柴雅仁 パーソナルトレーナー / 撮影:長谷川さや / インタビュー:高山、東ゆか / 編集構成:東ゆか