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ロールモデルがいたからハゲでも格好良い。髪を生やそうとは思わない理由とは?

 

ハゲ会にて出会ったのぶながさん。

以前、潜入取材したハゲ会の副会長を務める彼は、会長のベっちさんからの一押しがあった人物。

ダンディな見た目、柔らかい雰囲気の佇まいからは落ち着いた大人の魅力を感じる。

彼はどんな人物なのだろうか。

 

 

どんなお仕事をされてますか?

環境科学に関係する仕事をしています。

公的機関の観測施設にある観測装置の維持管理とか文献調査とか。

ときどき環境科学に関するシンポジウムのロジ業務なんかもしています。

研究発表とか施設の見学の時に取材を受けることはあっても、こういう僕自身に対しての取材はなかなかないので緊張しますね(笑)

 

普段ハゲ会を開催しているのぶながさんから見て、NOHAIRSはどう思いましたか?

NOHAIRSを見ると、「皆さん、スタイリッシュだな」と思いました。

『ハゲはコンプレックスだ』というイメージがあるけど、それを感じさせない方々ですよね。

あと、皆さん何かしら自分なりの考えを持っていますよね。

周りに迎合した上っ面の考えではなくて、自分で考えた結果の信念っていうのがあるんだろうなと。

実際に会ったことはないけど、写真から自分なりの自信を持ってる方ばかりだなという印象を持ちました。

 

ヒゲがダンディですね!

ありがとうございます。

特に意味もなく、20年以上前の学生の、髪がある頃から生やしてます。

実のところ、きっかけは昔住んでたところで大きな地震があって、余震でお風呂にゆっくり入れないからヒゲを伸ばしてたんです。

伸ばしてから口の周りだけ残したスタイルで色々な人に自分を覚えてもらったので、剃るに剃れなくなりました。今ではトレードマークです。

昔、髪があったときに「ヒゲがあればハゲても『ヒゲの人』って言われるよ」と言われてたけど、実際生やしたら『ヒゲでハゲでメガネの人』っていう自分に関する特徴が1つ増えただけでした(笑)

誰でも真似できますよ。

 

NOHAIRになった経緯は?

ハゲキャラは中学生の頃からです。

自分の地元は田舎だったから、男の子はみんな坊主にする中学校でした。

自分はおでこが広くて、それで昔からハゲ呼ばわりされてて。ずっとそういうキャラでした。

目に見えて薄くなったなって思ったのは20代後半です。

それから、いちいち髪型セットするのも面倒くさいし、頭頂部が薄いから髪を残してもペタンとなって顔の形と合わないし、「もういいかな」と思って10年くらい前に坊主にしました。

 

髪を生やしたいという気持ちはありましたか?

なかったですね。

うちの親父もハゲだけど、かっこよかった。

近くにいたロールモデルがかっこいい人だったんです。

そんな親父を見ていたら、髪があるからどうこうじゃないなって思ったんですよね。

身近にいた、学校の先生もハゲた人がかっこよくて。

周りにもハゲた人が多かったので、自分もそうなると思って覚悟できてたのもあるのかな。

 

お父様が素敵な方なんですね。

それなりにかっこいい親父だなと思いますね。

親父もハゲネタで笑ってるけど、周りでからかってる人も悪意があるわけではなく、愛を感じられる。

そういうことでみんな楽しそうに盛り上がってるのを見て、それはそれでいいなという感じでした。

 

坊主にする前と後で変わったことはありますか?

髪があった時より多方面で楽になったと思います。

ロールモデルがいたから、ハゲてもこうなるっていうのがシミュレーションできていて、予期しないことではなかったので、その点では他の方々とは違うかもしれないです。

あと、これは自分の個性だとは思ってなくて、『特徴』だと考えています。

小説家の三島由紀夫が「個性とは自分の弱みを知り、それを強みに転じる居直り」、漫画家のみうらじゅんが「尊敬する誰かの真似をして、どうしても真似しきれなかった余りの部分がコンプレックスで、それこそが自分であって個性だ」ということを言っています。

 

特徴をコンプレックスとして捉えるか、個性として捉えるかは紙一重の問題だと思うんですよね。

自分は周りにいるロールモデルがかっこいい人たちばかりだったので、コンプレックスとして感じることはほとんどなかったです。

まあ、特徴が際立ったことで自分のことを知ってもらえたり会話が弾んだり、それが結果的に個性になったのかなと思うところはありますが。

みうらじゅんが言う、『ポジティブにあきらめる』みたいな、『しょうがないよね』っていうある種、居直ってから、周りが僕を悪意のない面白がり方をしてくれた。

それがすごくよかったです。

 

具体的にどういう人をかっこいいと思いますか?

こだわりがない人、自信と信念を持っていてもそれにこだわりすぎない人ですかね。

仕事へのこだわりはとても素敵で重要です。ただ、人生へのこだわりが強すぎると、1つの見方しかできなくなってしまう。

自然科学の仕事を通じても感じます。客観的に物事を見定めて、本質は何かを考えられる人ってすごくかっこいい。

表面的ではなく、物事を見たときにきちんと本質を見極められて考えられることってなかなかできないので、自分への戒めを込めての意味もありますけどね(笑)

何か変にこだわりを持たずに日々を生活して、その場その場で適切な対応ができる人はかっこいいなと思います。

 

のぶながさんはハゲ会の副会長として、ハゲに対してどのようお考えになっていますか?

ハゲ会を始めた当初は特に何も考えてなくて、『ハゲ』っていう共通項を持つ人が集まったら楽しそうだなくらいに思っていました。

やってみて、ある日突然髪がなくなったり、悩みを持っていたり、ハゲっていう言葉を使うことに抵抗がある人がいることに改めて気付いたんです。

『ハゲ』っていう現象にも色々な解釈があるのだなと思いました。

それが自分が思っていたよりも奥が深い。

ハゲ会をやってると、「生やせるものなら生やしたい」という方ももちろんいますし、自信が持てないという意見もあります。

そんな中で、ハゲというのをフューチャーすることが差別や偏見を生まないように、そこのバランスを保つのって難しい。

ハゲだから偉いわけでは決してないのですが、プラスな意見を発信するのは重要ですよね。

メディアとしてのNOHAIRSはその辺りがうまいなあと。

今、興味があるのは『ハゲ』という現象に対して人によって温度差が出るのは、個人の心理的要因が強いのか社会的要因が強いのかということです。

これについて自分なりにまとめられたらと思ってます。

結論を出すつもりはなくて、科学的・社会的・哲学的な目線、色々な分野から、ニュートラルに「こういう考えもあるよ」ってまとめられたら、何かに活きるのかなと思ってます。

 

 

—ロールモデルがいることのありがたさ、周りの環境のありがたさを実感しているからこそ優しさが滲み出ているのだろう。

『ハゲ』でありながら、悩んでいる人も振り切っている人にも触れ続けている彼の考えはまさに我々も見習うべきであった。

引き続き、研究結果を楽しみに待ちたい。

 

モデル:のぶなが / 撮影:長谷川さや / インタビュー:高山 / 編集構成:土屋リサ

 

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